クリニックでスタッフを採用するとき、医師や一部の専門職を除けば、必ずしも「飛び抜けたスター選手」が必要になるわけではありません。むしろ、多くの場面で必要とされるのは“安定した活躍”が見込める人材です。
そのイメージを野球にたとえると「7番セカンド」。
この記事では、なぜ「7番セカンド」という言葉がピッタリなのか、その背景と、いったいどんな人材のことを指すのかを掘り下げて考えてみましょう。
なぜ「7番セカンド」なのか
1. 野球の打順から見る“役割分担”
野球では、強打者が4番やクリーンナップ(3番・4番・5番)を担うことが多く、チームとしては試合を決める一発を期待されます。
一方、7番あたりの打順は「そこそこの打力」でチームに貢献し、守備では堅実なプレーを求められるポジションでもあります。
7番は決して“華やかな存在”ではありませんが、着実にヒットを打ち、チャンスで次の打者に繋ぐことでチーム全体を支える重要な役割を担うのです。
2. セカンド(2塁手)の守備は“ミスを許されない”
セカンドの守備位置は、ショートと並んで内野の要といわれます。広い守備範囲、ダブルプレー、外野への送球の指示、ベースカバーなどテクニカルかつミスが許されない守備を任されることが多いです。
つまり、セカンドには「いかに安定して基本プレーをこなせるか」が求められます。4番のような豪快なホームランこそ期待されないものの、堅実さがないと試合を壊しかねない――そんな難しさと重要性を併せ持つポジションなのです。
3. “大きな失敗”を避けるのがクリニック運営の肝
クリニック経営においては、たとえば看護師や医療事務、受付など、比較的多くの人が応募しやすいポジション(以下この記事では「スタンダードポジション」と呼びます)が存在します。
スタンダードポジションは院長や管理職のような“上位レイヤー”ほどの専門性は求められなくとも、クリニック全体の現場運営を支えるには欠かせません。
このスタンダードポジションを採用する際、何より大切なのは「基本をしっかり押さえ、大きなトラブルを起こさない」こと。
4番ファースト(目立った活躍ができる超人材)を無理に狙って失敗するより、7番セカンドのように堅実で安定感のある人こそ、クリニックの経営にとって肝心なのです。
「7番セカンド型」人材とは?
1. 無難で安定的なパフォーマンスを発揮できる
医療事務や受付、看護師などスタンダードポジションにぴったりな7番セカンドに当てはまる人材は、「そこそこの実務能力」を持ち、日々の業務をソツなくこなせるタイプです。
クリニックでは院長自身がプレイングマネージャーとして診療や経営の大半を担っているケースが多いため、飛び抜けた成果を叩き出すわけではなくても、補佐的に動いてくれる人の存在こそが重要です。
「大きな失敗をせずに、人間関係に問題を起こさず、日々の業務を安定して止めずに回してくれる」
そんな人材の大切さを、日々人事労務に勤しまれている先生方はよくわかるのではないでしょうか。
2. チームプレーを大切にし、協調性がある
7番セカンド型の人材に共通するのは“協調性”です。強い個性や独創性を武器にするよりも、「周囲との連携をスムーズにとり、流れを止めない」姿勢こそが持ち味。
野球の二塁手がダブルプレーの連携やチームの守備位置の調整を通してチームに貢献するように、クリニック現場ではスタッフ同士のコミュニケーション力が重要になります。
ときには看護師と、またあるときは医療事務や受付スタッフと、縦横無尽に連携を図りながら患者さんをサポートできる人が理想的です。
3. “禁忌”を踏まず、社会性をしっかり持っている
7番セカンド型の人材を採用面接でどう見抜くか?
それは禁忌肢を踏まないかどうかの見極めです。
たとえば採用面接で「前職の批判を繰り返す」「何でも他責的に捉える」「すぐ感情的になる」といった傾向が見えるタイプは、院内トラブルの温床となりかねません。
また、転職回数が極端に多かったり、社会人としてのマナーが身についていない場合も要注意です。
7番セカンド型人材はむしろ、こうした“やってはいけないこと”を常識的に理解し、面接の場でも安定した受け答えができるのが特徴です。
華々しい経歴や特異な実績を強調することはあまりなく、当たり前の礼儀やルールをきちんと守れる――こうした人が長く働けば、クリニックは少ないストレスで安定した経営を続けられます。
なぜ“4番”や“エース”を追い求めないのか?
ここまで「7番セカンド」を推奨する背景には、「4番ファースト」や「エースピッチャー」といった大物を採用する必要が少ない――というクリニック経営の特性が関わっています。
もちろん、高い専門性や高度な判断が求められる場面もありますが、それは院長が担う部分がほとんど。
院長以外のスタッフに「ホームラン級の成果」を期待するより、地味でも安定した支え役を確保する方が、結果として組織に合った形で運営しやすいのです。
4番打者を狙う採用は、企業でいえば“次期経営幹部”や“高度専門職”を探すのに近いかもしれません。
しかし、スタンダードポジションの採用でそこまでの逸材を求めると、そもそも母数が足りなかったり、相手もより良い条件の病院を選んでしまうかもしれません。
ハイリスクハイリターンを狙うよりも、「7番セカンド」のようにコツコツこなせる人材を採用し、離職率を下げることが中長期的には大きなメリットにつながります。
まとめ:スタンダードポジション採用は「7番セカンド」が正解!
以上のように、「7番セカンド」という表現には、“目立ちはしないが安定感のある存在”というニュアンスが込められています。
飛び抜けた才能よりも、安心して任せられる安定力が欲しい。チームの守りの要として、ミスを最小限に抑え、着実に仕事をこなせる人がクリニックには必要なのです。
- 無理に大物を狙わないこと
- 大きなトラブルを起こさない社会性と協調性を重視すること
- 堅実な仕事ぶりでクリニックを支えてくれること
この3つを意識すれば、採用のミスマッチが減り、院内スタッフ全体のストレスを最小化できるでしょう。
もし「なぜうちは新人がすぐ辞めるのか」「いつまでも安定した組織づくりができないのか」とお悩みなら、ぜひ一度「7番セカンド型人材を採るにはどうすればいいか?」という視点で採用活動を見直してみてください。
結果的に、院長や主要スタッフの負担を減らし、患者さんにも安定したサービスを提供できるクリニックへと変わっていくはずです。
「でも7番セカンド型人材を採用するにはどうすれば…?」と思った先生はこちらの記事も併せてご覧ください!
もしクリニックにおける採用や、離職率低下に悩んでおられるようでしたら、弊社 インヘリジェンシーがご支援をいたします。
人事経験が豊富な現役医師によるコンサルティングの無料相談は下記リンクよりどうぞ。
-
人事評価制度
【クリニック院長必見】離職率を下げる人事評価制度ってナニ?:3つの柱でクリニックを強くする方法
結局、人事評価制度ってなんなの?クリニックの離職率を下げるヒントが満載!「等級・評価・報酬」3つの柱をうまく活かして、あなたのクリニックの経営を安定させましょ… -
人事評価制度
クリニック院長が陥りがちな「人事評価制度の落とし穴」
スタッフが辞めない職場づくりのコツ、教えます! こんな悩み、ありませんか? 「うちのクリニック、何か違うんだよなぁ…」 人事評価制度を入れてみたけど、なんだかピ… -
採用
『7番セカンド』型人材を採用するために… 面接で見抜く、こんな人には気をつけろ!
野球で言う『7番セカンド』――すなわち“安定感があって大きなミスをしない、しかし一定の水準で着実に活躍してくれる”人材を採ることは、クリニックの経営において組織全… -
人事評価制度
人が辞めないクリニック経営のヒケツとは?〜カギは人事評価制度にあり〜
■ 人が辞めないクリニック経営のヒケツとは!? 「せっかく採用した看護師やスタッフが、気づけばすぐに辞めてしまう…」こうした悩みを抱えるクリニックは少なくありま… -
採用
クリニック採用は「7番セカンド」を狙え!――“飛び抜けたスター”ではなく“安定感”こそがクリニックに必要な理由
クリニックでスタッフを採用するとき、医師や一部の専門職を除けば、必ずしも「飛び抜けたスター選手」が必要になるわけではありません。むしろ、多くの場面で必要とさ…